酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

取調室の心理学 平凡社新書 (226)

浜田寿美男 (ASIN:4582852262)
心理学者として刑事事件の精神鑑定などに関わってきた著者が、冤罪事件ではないかと世で囁かれる事件について、取調べ調書を読みながらの疑問を述べた本です。本書の内容は、タイトルのような「心理学」を中心に据えたものではなく、心理学者の観察した「矛盾」の報告です。
著者はこれらが冤罪であると決め付けているわけではありませんが、素朴な疑問をいくつも提示し、過去冤罪を生み出した構造が取調官の「証拠無き確信」にあること、取調べ過程は調書の他にも、録音や録画を使って記録されるべき性質のものであることなどを主張します。
一旦起訴された場合の有罪率が 99.9% という異様なほど司法の強いこの国で、私たちはどのような心構えでいればよいのでしょうか。特に社会が「犯人」を強く求めている場合に、その圧力に耐え続けることの難しさは捜査側も被疑者側も筆舌に尽くせないものがあるようです。