半落ち

半落ち (講談社文庫)

映画化もされてそれなりにヒットした作品ですね。
以前から気になっていたので読んでみました（いまさらですけれど）。

面白い小説でした。妻を殺したとして自首した警察官を巡り、関係者を一人一人取り上げながら（取調官、弁護士、検事、裁判官、新聞記者などなど）それぞれの視点で事件を描き出していきます。組織の論理、人間と人間の微妙な心理戦などが手慣れた筆致で展開し読むものを飽きさせません。

ただ・・・（以下ややネタバレ？）

多くの書評でも書かれていますが最後がやや「とってつけた」感があります。そのため最後のページに向かって段々と緊張感がほどけて行き、あまり「そうだったのか」といった爽快感には欠けるきらいがありますね。もちろん爽快感を出さなければならないというわけでもありませんが、かといって人間存在の深さあるいは不条理に触れたという感じでもありません。一応筋は通っているのですが、なんとなく「ミステリーのお約束だから説明しておくか」といった印象を受けてしまいました（失礼）。
荘厳なオペラが鳴り響いていたのに、なんだか最後は尻すぼみと言ったら言い過ぎでしょうか。

この際、謎は謎のままとして、いくつかの可能性を示唆しながら幕切れでも良かったのではないかとも思いました。