酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

彼女について

彼女について (文春文庫)

彼女について (文春文庫)

この一つ前のエントリでご紹介した
大きらいなやつがいる君のためのリベンジマニュアル (岩波ジュニア新書)の中で言及されている2冊の書籍のひとつです、リベンジマニュアルの著者も引用していましたが 180ページの

「君の幸せだけが、君に起きたいろんなことに対する復讐なんだ」

という言葉は、世の中に対しどうやって恨みを晴らしてやろうかと考えるあまりに、自分自身を損なってしまいがちな人にとって気持ちを切り替える気付きの言葉ともなり得るものでしょう。リベンジマニュアルの作者の方はなんとか気付くことができたようでした。

とはいえ、現実的にはちょっとしたヒントを与えられるだけで自分自身でそれに気が付ける位なら、自己否定のネガティブスパイラルには入って行かない筈なので、この書籍もやはり大切な人を支えたい周りの人にこそ大きな価値があるのかもしれません。示される様々なエピソードが様々な示唆に富んだ小説だとは思うのですが…少なくとも終わりの直前までは。

物語としては途中から段々違和感が生じてきて、最後にその違和感の正体が明かされたとき、なんだかがっかりもしました。まあ小説だからそれでも良いという考え方もあるのでしょうが、そうすることによって救われるものも救われないような気がしたのです。まあこれは読者の勝手な思い込みで作者はそもそもそんな「効果」は考えていないと言うのかもしれませんが。

次のエントリーでは、言及されていたもうひとつの作品 ヤサシイワタシ(1) (アフタヌーンKC) を取り上げます。