酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

リンゴの木 (続)

リンゴの木 (角川文庫)

リンゴの木 (角川文庫)

前回のエントリで角川文庫版「リンゴの木」の最後の一行について書きましたが、他に手に入る翻訳も確かめてみました。

林檎の樹 (新潮文庫)

林檎の樹 (新潮文庫)

リンゴの木、りんごの木、林檎の樹と表題からして違っていますが、まあこの辺は訳者/編集者の趣味ということで。

あとがきなどからわかったことは、角川版は1955年の翻訳、新潮社版は1953年の出版(翻訳はそれ以前)、岩波文庫版は1986年の出版ですが訳者が17〜18歳のころ訳したものを下敷きにしているとのことで、訳者が 1930 年生まれのことから(訳者の言を信じるなら)1947年前後の翻訳ということになります。

さて前回のエントリーで書いたように、私が取り寄せた 2005年出版の原書(最初の出版は 1926 年)には、私が角川版で感じた違和感のある最後の一行は存在しませんでした。

The Apple Tree: Tales from Caravan (Nonsuch Classics)

The Apple Tree: Tales from Caravan (Nonsuch Classics)

まとめると、「最後の一行」の有無は以下のようになります。

角川版○ - 1955年翻訳
新潮版○ - 1953年頃翻訳
岩波版× - 1947年頃翻訳(出版は1986年)
原書版× - 1926年出版時

原作者のゴールズワージは1933年1月31日に亡くなっていますので、1950年前後に改めて最後の一行を付け加えた原書が出たとは考えにくいと思います。3つの翻訳は出版年こそ違いますが、1950年前後に翻訳されたということには変わりがありません。

最後はそれぞれの翻訳者の方々に直接聞いてみるしかないのかも知れません。