酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

泥棒が1ダース

物を盗み出す事に関してはプロ中のプロ、ジョン・ドートマンダーが、その冴え渡る智慧を駆使して、一見不可能な窃盗計画を次々に実行に移して行きます。そのまま鮮やかに事が進行すれば、お見事お見事でお仕舞いで、まあそれでもある程度は面白いかもしれません。
しかし、残念ながら毎回ドートマンダーの想定しない事態が現場で次々と起り、事態は二転三転の様相を見せ、一体誰が裏をかいたのか、かかれたのかが、最後までわからずハラハラドキドキ(死語)の連続となります。ドートマンダーも機転の限りを尽くし、様々な難局をかわしていきますが、それでも運命の悪戯の上でギリギリの綱渡りを強いられます。
久々に純粋に「楽しめた」ミステリー短編集です。洒脱な会話と捻ったストーリー展開は絶好の移動時間の友となることでしょう。読書の秋にお勧めです。