酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

純愛時代

純愛時代 (岩波新書 新赤版 (688))

純愛時代 (岩波新書 新赤版 (688))

精神科医からみた「純愛」をキーワードとして語る患者さんたちの物語(といっても診察室の中で交わされる会話が中心ですが)。相変わらずこの著者の本は、精神分析に関する解説書というよりもまるで軽い推理小説を読んでいるような感覚を受けます*1
最初よくわからなかった事態がだんだん解きほぐされていき、あらたな気付きが生み出されていく様子の描写は読者の興味をそらさないという意味で成功しています。
さまざまな事例を通して、現代における「恋愛」というものの困難さ、よりどころのなさはよくわかりますが、もちろんこの本が解決策を与えてくれるわけではありません。ただ問題の輪郭を少しばかりはっきりさせてくれるだけです。

*1:まあその辺がユニークな点でもあるのですけど