酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

まっすぐ天へ 1

まっすぐ天へ 1 (モーニングKC)

まっすぐ天へ 1 (モーニングKC)

地上36000キロメートルを飛ぶ静止軌道衛星から、地表に向かって「はしご」を下ろせば、そのはしごを伝って地上と宇宙を往来できる。ちょっと聞いただけでは荒唐無稽に響くこのプランは「軌道エレベータ」という名前で呼ばれていて、既にSFの世界だけではなく、まじめな宇宙技術開発の世界でも議論されています。
この本は軌道エレベータ実現を阻む大きな技術的課題(衛星から地上へ垂らしても切れない「丈夫な素材」の開発
)が、あるゼネコンの研究所で開発されたところから話が始まります*1
折しも衛星打ち上げに失敗を重ねる日本の宇宙開発事業団の1職員が、この素材の存在を知り、画期的な宇宙開発の方法としての軌道エレベータの構想メモを作成し、国際デブリ*2学会で発表することから一気に話はヒートアップします。
といっても単純なめでたしめでたしの話ではなく、お役所や国家間のメンツと政治争いにどんどん関係者が巻き込まれ、問題は未解決のまま第一部完となります。現在連載は中断していますが、ぜひ第二部以降を再開して欲しいものです。
ところで軌道エレベータを扱った有名な SF としてはクラークの「楽園の泉 (ハヤカワ文庫SF)」が挙げられますが、本書でも”アーサー・マインヘッド”という名前で登場しています。加えて途中登場する”ドクター・バーナム”もアイザック・アシモフを彷彿させる人物として描かれてます。

*1:もちろんフィクションです

*2:宇宙を漂うロケットなどからの廃棄ゴミ。これからの宇宙開発を進める上で重要な課題になると考えられている