酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

世界が変わる現代物理学

世界が変わる現代物理学 (ちくま新書)

世界が変わる現代物理学 (ちくま新書)

久しぶりに物理学の最先端に関するお話を読みました。この手のお話で最後に読んだのは「超ひも理論」あたりが最後だったのですが、この本では更に「ループ量子重力理論」なるものが取り上げられています。人間の知性の限界や、実在論と実証論の間のせめぎあい、間主観性、など日頃あまり考える機会のない問題について色々と刺激を与えてくれる本です。
いろいろ楽しめる内容なのですが、少し気になる部分も。例えば以下のようなくだり(226ページ)

私も、現代物理学や現代思想や現代文学や現代美術の世界にどっぷりと浸かっているときに、ふと、より直感的で単純でわかりやすいモノ的な世界に帰りたい、という奇妙な望郷の念にかられることがあります。
しかし、人類は、すでにコト的な世界へと大きな一歩を踏み出してしまったのです。
もはや、後戻りは許されないのです。

まあほとんど揚げ足取りのような感想なのですが、「許されない」という言葉は何を表しているのでしょう。「誰の」許しを得られないというのでしょうか。人間は直感的でわかりやすいモノ的な世界に「帰る」ことはいつでも可能であり、その自由を楽しめることこそが面白いところなのではないでしょうか。
「いや本当はその先に真理があるのだから、そこで安住するのは知的怠慢だ」という意味なのかもしれません。それは科学者の態度としては「正しい」と思いますが、わかりやすく単純な世界での「リフレッシュ」も必要だと思います (^-^;。