酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

再生巨流

再生巨流

再生巨流

世にも珍しい「ビジネスモデル小説」です。ある物流会社の中で次々と新規ビジネスを立ち上げながらも、部下を育てる管理能力がないという烙印を押された主人公が、新規ビジネスを立ち上げる部署の責任者となるところからお話は始まります。部下は営業部の厄介者の若者と、お局OLの二人だけ。当期に課せられたノルマは4億円で、未達の場合には部下ともども格好のリストラ対象として狙われる立場です。
当初途方に暮れる主人公があるビジネスアイデアを掴み、それを様々な人々の協力を得ながら、詳細を詰めて形にしていくさまは(もちろんフィクションの世界ですからご都合主義もありますが)全体としては相応のリアリティをもって読むことができます。腰の引けた顧客や、安定志向でプランを潰しにかかる上司の役員などとの丁々発止のやりとりもよませどころです。
また単なる数字をいじるマネーゲームに陥ることなく、既存のビジネスモデルに行き詰ったインフラをも巻き込んで、地域レベルからの再生も視野に入れたプロットはなかなか読ませるものに仕上がっていると思います。
エンターテイメントとしてもよく出来ていると思いました。