酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

イケズの構造

イケズの構造

イケズの構造

ひさうちみちお氏の表紙に思わず惹かれて購入しました。京都人を特徴付ける(と思われている)「イケズ」についての面白い考察です。著者は京都に生まれ育ち、現在は10年近く英国で暮らすという人物。
京都の「イケズ」にまつわるエピソードと言えば、「京の茶(ぶぶ)漬け」などが真っ先に思い浮かぶ人も多かろうと思います(私もその一人でした)、あるいは一見さんお断りのすげない態度などなど。
しかし、少し掘り下げて見てみれば「イケズ」とはコミュニケーションを多層化し、表層的な見方を疑い、ユーモアとともにあからさまな嫌悪を包もうとする洗練された文化…といえなくもないかもしれません(笑)。
後半の章に出てくる、「イケズ」とシェークスピアとの関係など、結構ゾクゾクとさせるものがあります。これは欧州と京都という「歴史の深い都市文化」ならではの相似から生み出される感性なのでしょうか。あからさまを嫌い、単純な好悪の表明を嫌い、歴史感覚の欠如を嫌い、過度の干渉を嫌う。
「言葉」の豊かさと可能性を改めて感じることのできる一冊です。
でも個人的には「イケズ」の中で日々を暮らすことはできそうにありません(笑)。