酔眼漂流読書日記

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世間のウソ

世間のウソ (新潮新書)

世間のウソ (新潮新書)

著者の日垣氏が、世間にはびこる「常識のウソ」「報道のウソ」を丁寧に数字を挙げながら、あるいは様々なニュースソースを駆使しながら暴いていきます。取り上げられる事例は「自殺」「安全」「人身売買」「精神鑑定」「児童虐待」などなど。普通に流される紋切り型の報道の裏に、報道機関の詰めの甘さ、迎合的な姿勢を嗅ぎ取りながら問題を様々な方向から検証します*1。もちろん取り上げられた個別の事例も問題なのですが、日垣氏がその裏で問題にしているのは、安易な情報を鵜呑みにすることの危険性です。
たとえば食品をめぐる安全性の話題の中では、報道機関が、年間数万人の死者を出している自動車の問題を放置しながら、狂牛病をはじめとする食品関連の事案では「絶対的な安全」を主張することの捩れを指摘しています。
まあ正直攻撃的な文体で(笑)、人によっては読むことに抵抗があるだろうと思います。私自身日垣氏のすべての価値観に全面的に賛成するわけではありませんが、思考停止せずに「何故」を追求する姿勢には共感しますし、見習いたい点だと思います。

*1:まあ新書という狭い紙面での記述ですので限界はありますが