酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

いつからファーストフードを食べてきたか

いつからファーストフードを食べてきたか

いつからファーストフードを食べてきたか

最初タイトルを見たときに、よくあるファーストフード批判本かと思ったら、全然違っていました。
著者の佐藤昴氏は日本マクドナルドの創業時のメンバーで、マーケティング部長を勤め、後にケンタッキーフライドチキンKFC)に移って最後は代表取締役社長になった人です(現在はKFCの顧問)。一貫してマーケティングに関わってきた佐藤氏は、いわば日本のファーストフードの歴史を提供者の側から知悉する生き証人と言えるでしょう。
近年スローフード運動などの盛り上がりや、業態の成熟により、世界的にも頭打ち感のあるファーストフードの世界ですが、佐藤氏の分析は当事者としての実感に裏打ちされながら、決して一方的なファーストフードや特定の企業擁護に偏ることなく、外食産業全般の過去、現在、未来についての考察を述べたものになっています(まあ過去といっても、20世紀半ば以降ではありますが)。
氏の経歴からマクドナルドとKFCへの言及が多目なのは当然ですが、ライバルのモスバーガーはもちろん、ファミリーレストランや回転すしなども視野に入れたとても面白い回想と考察に仕上がっています。サービス業に携る人(外食産業に限らず、たとえソフトウェア開発といった業態であっても)にはヒントになることが多かろうと思います。
例えばサービス業のマーケティングに関するペプシコの事例として、店舗の損益計算(P/L)を考えるだけではなく、顧客の損益計算、従業員の損益計算を考えて、サービスプロフィットチェーンの最適化をはかる手法の話が出てきます。こうした背景知識なしに、キーワードとしてのCS向上だけを謳っても、意味がなかったということがよくわかります。