酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

わがソフトウェア人生―SRA会長丸森隆吾

前田義寛(著)
日本の独立系ソフトウェアハウスの草分け SRA の、元社長にして現会長の丸森隆吾氏の伝記です。といっても個人史というよりも、SRA の歴史ひいては日本のソフトウェア産業黎明期の歴史にも力点がおかれている本です。ソフトウェア業界に昔から関わっていた方には懐かしい人や事物が登場してきます。
いまでこそソフトウェアはいっぱしの産業のような顔をしていますが、SRA が創立された昭和 42 年当時はソフトウェア専業で生きていくことは一大決心であったであろうことがよくわかります。とはいえ当時の関係者たちは皆、新しい技術を使って世の中を変えていくことに志を持ち情熱を注いでいました。当時に比べるとソフトウェア産業の地位は上がったものの、産業としての成熟につれ個々のエンジニアの「熱い」課題は、かえって見出し難くなっているのかもしれませんが、それでもこうした先人たちの物語を読むと、勇気付けられる所も大でしょう。
業界内の固有名詞が多く登場するので一般向けの読み物とは言えませんが、ソフトウェア業界の歴史に興味のある方には参考になるところ大です。
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なお私事ですが、私は SRA に 1982 年(昭和57年)に入社しました。当時は VAX11/780 が導入された直後であり、UNIX を使った開発を思い切りさせていただきました。今でも感謝しています。