宮部みゆき
休職中の刑事の元に、遠縁の若者から持ち込まれた風変わりな依頼。失踪した婚約者を探してくれというその依頼は、調査が進むにつれてますます謎を深めていきます。以前短編集「返事はいらない」を読んだときには、ところどころ強引な展開を感じることもありましたが、この本は冒頭から最後までよどみなく物語が流れ、読者をひきつけ続けます。誰の足元にも待ち構えているかもしれない、多重債務者への落とし穴。追い詰められてそれでも必死で逃れようとする人間の苦闘と矛盾を宮部氏は巧みに描き出して行きます。
気の利いたトリックが登場するわけではなく、天才的な人物も登場せず、どちらかといえば地味な等身大の人間達の小さな思いを積み重ねて行きながら印象深い物語が構成されていることに感心しました。
