酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

日暮し(下)

日暮らし 下

日暮らし 下

やはりこの本も普通のミステリーとは毛色が変わっていました。物語の底を流れるのは前作「ぼんくら」でも扱われた「湊屋」を巡る因縁なのですが、実際に起きる事件はそうした単純な因果関係を歯牙にもかけぬように、ちょっとした行き違い遥か昔の存念により引き起こされるものばかりです。
表題の「日暮し」はそれでも日々の生活を積み重ねていかざるを得ない「普通の人々」のありようからとられているのでしょう。
ただ今回は前作よりはやや大掛かりな立ち回りもあり、人間の悪意や愚かさもより顕わに描かれていた印象がありました。
さまざまな伏線も残されたままです。次回以降、今回ますます魅力に磨きがかかった弓之助の活躍も楽しみですが、個人的には話の端々に登場する「佐々木先生」の出番があるのかどうかも少々気になっています。