酔眼漂流読書日記

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星守る犬

星守る犬

星守る犬

ビッグコミックスペリオールの巻末企画に西原理恵子の「人生画力対決」というものがあるのですが、そこに最近ゲスト登場したのがこの本の著者、村上たかし氏でした。
村上たかし氏といえば「ナマケモノが見てた (1) (集英社文庫―コミック版)」でデビューはしたものの、私にとってはあまり絵の上手くない(失礼!)動物ギャグマンガの人というイメージしかなくて、そのあと名前を見かけることがあっても、その漫画までは読んでいませんでした。

上記の「人生画力対決」そのものは、まあいつもの脱力系で、面白くはあっても特にどうという内容ではなかったのですが、そこで紹介されていた本書「星守る犬」に興味を惹かれて読んでみました。

本書の内容は大きく2部に分かれています。

愛犬と旅に出た、というよりも家族と家を失って愛車で放浪を始めた中年男性が、犬と共にさまよいやがて絶命し、犬もその何ヶ月かあとに主人の側で命を閉じる第1部は、それだけでは単にありがちなロードムービー的お涙頂戴物語です。もしここで終わってしまったならば、谷口ジローの名作「犬を飼う (小学館文庫)」の方が良かったかなと思うだけだったでしょう。
しかし、本書を真の傑作にしているのが、第2部の物語なのです。これによって、「犬を飼う (小学館文庫)」と肩をならべ得る作品になったと(個人的には)思います。

ここでは第1部で男性が亡くなった地方のケースワーカーが主人公です。私もきちんとは知りませんでしたが、警察から身元不明の遺体を引き取り弔うのもケースワーカーの仕事だそうです。このケースワーカー奥津氏がひょんなことから男性の身元の手がかりを見つけ、それを自分の足で確認に行きます。亡くなった男性が犬を飼っていたいたこと、その犬が最後まで男性の側を離れず寄り添うように死んでいったことなどを知り、男性が犬のために精一杯尽くしていたらしい情報を得て、奥津氏は素直に優しくしてやれなかった子供時代の自分の飼い犬に思いを馳せます。

第1部であまり良いこともなく死んでいった1人と1匹への長い弔いの旅がここには描かれています。そして第2部の主人公もその弔いを通して自分の過去を振り返り、素直に相手を愛してやれなかった自分に気が付くのです。

このあと奥津氏が新たに犬を飼ったり、結婚したり(50歳になるまで独身)したりするのかはわかりませんが、少なくとも弔いが続くことを示して本書は幕を閉じます。

万人向けですが、犬好きの人ならまた格別の思いをすることでしょう。