一般向けでない技術的話題は別館に分離すると書いたばかりですが(笑)、一般の方も巻き込んで盛り上がった話題なので、こちらに紹介しておきます。
「プラズマ・核融合学会誌」に掲載された"イオンエンジンによる小惑星探査機「はやぶさ」の帰還運用" (PDF) という記事が、とても面白いものでした。
確かに難しい話題ではありますが、今回の「はやぶさ」の帰還に関しては、単なる運や気合で奇跡が生み出されたわけではなく、地道な何年にもわたる科学者と技術者の努力が、度重なる困難に立ち向かうことを可能にしたことが分かりますね(もちろん、こうした解説記事では、ほんの一部を垣間見ることができるだけですけれど)。
短絡的に見れば「宇宙に行けたからそれが何?」と思われてしまうようなものでも、こうしたミッションはそれを取り巻く「人々」に確かな技術を蓄積していて、それが長い目で見れば一般人をも含んだ「人々」を幸せにする役にたっていくのだなと思えます。
ミッションの「目に見える結果」も大事ですが、最も大切なメタ・ミッションはこうしたプロジェクトを通して「貴重な人材が育成される」ことなのだと思います。大型プロジェクトの一番の価値はそこにあると言っても過言ではないでしょう。
この解説記事の冒頭に以下のような記述があります
「はやぶさ」のめざす工学技術検証は,以下のようなも
のである.
1.イオンエンジンを主推進機関として惑星間を航行す
ること.また低推力の連続加速とスィングバイの併
用による加速操作(EPΔVEGA: Electric Propelled
Delta-V Earth Gravity Assist)技術を習得すること.
2.光学情報を用いた自律的な航法と誘導で,目標天体
に接近・着陸を行うこと.
3.微小重力下の天体表面のサンプルを採取すること.
4.サンプルを収めたカプセルを,惑星間飛行軌道から
直接大気に再突入させ,地表でサンプルを回収する
こと.
このことから、小惑星「イトカワ」に着陸できた時点でミッションの半分は成功していたということになりますね。4も成功しましたから既に上記ミッションの 3/4 は成功したわけです。
関係者の方々の努力に敬意を払います。