酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

木下夕爾 花神コレクション〈俳句〉

木下 夕爾 (ASIN:4760290400)
広島の詩人木下夕爾氏(1914-1965)のことを知ったのは最近のことです。金子みすゞにも通じる日常を見つめた素朴な詩が心に残ります。この本は散文詩ではなく句集です。紹介文を新たに書くよりも、本書に収録されている大岡信氏による、木下氏の紹介文を引用しておきましょう。


木下夕爾の詩の中には、近代化された日本の大都市の生活から急速にきえゆきつつ
ある自然の息づかい、やすらぎがある。詩的誇張も大きな身振りによる現代的苦悩
の告白もない代わりに、うつろってゆく事物のささやかな瞬間の命を、言葉に救い
あげ、不死のものにしてゆこうとする堅固な意思がある。
一つ一つが鋭いというよりも、いくつかの句を読み進めるうちに、じわりとその良さが湧いてくるような作品ですので、一つ二つだけの引用は難しいのですが、そこを敢えて二つほど引用しておきましょう。

秋草を出て秋草に消ゆる経
土に鳴くものとわれとの夜の秋