酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

流星ワゴン

流星ワゴン (講談社文庫)

流星ワゴン (講談社文庫)

父と子の物語です。家庭が荒れ、仕事を失い、どうにも追い詰められた主人公は不思議なワゴン車に乗ることになり、不思議なドライブに出かけることになります。そこで出会ったのは自分と同い年の父親だったり、知らなかった家族の姿だったりましす。
安易なお涙頂戴ではありませんし、最後も苦味のなかに微量の希望をミックスしたものになっています。その意味では家族の意味を考えさせる良い本だとは思います。
巧みなストーリーではありますし、十分に引き込まれますが、なんとなくSF的な見地からの整合性(世界を支配する一貫したルール)が気になってしまう部分もありました。
また女性特に主人公の妻の振る舞いとその動機が、あまりにも安っぽい内容で、それを単に人間の性として扱う姿勢は少し疑問を感じました。この本における主人公の妻は明らかに依存症だと思われますが、病気という認識も、それに対する治療という発想が微塵もなく、単に「人間にはそういうこともある。仕方のないこと」と切り捨ててしまっている点が気になりました。