酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

吉松隆の楽勝!クラシック音楽講座

今やとても珍しい存在である「交響曲作曲家」の吉松隆氏による、音楽用語辞典です。様々な媒体に書かれていたコラムを一冊の本として編集したものです。もともと音大を出た人ではなく、慶応大学工学部を中退して作曲家になったという変り種です。
内容は様々な音楽トリビアの塊で、この方面にあまり知識のない私には面白い話が満載です。特にいわゆるクラッシク業界の収益構造は興味深く読むことができました。語り口は地口の多い落語のよう(まあオヤジギャグ的とも言えますが(笑))。

印象に残った逸話の一つ:

ショスタコーヴィチが若い頃、友人と一緒に師であるグラズノフの前でブラームス交響曲を初見でピアノ連弾したときのこと。初見ということもありうまく演奏できず先生に「すみません、実はこの曲まだ聞いた事がなくて」と言い訳したところ、先生が答えて曰く。「なんて幸せなんだろう。きみたちはこれから、たくさん美しいものに出会えるのだから。私ときたら、もう何もかも知っている。本当につまらないよ」。