酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

雪の峠・剣の舞 (KCデラックス アフタヌーン)

岩明 均 (著)
寄生獣」で有名な岩明均氏が描く、戦国歴史コミックです。 「雪の峠」「剣の舞」の2編で構成されています。「雪の峠」は関ヶ原の合戦で西軍についたために国替えになった大名家の築城顛末記。それまでの藩を支えてきた戦乱の世に拘る「戦国武将」たちと、新しい安定の時代を見据えて、経済的発展を考えた街作りを考える若い役人たちとの頭脳戦が展開します。
「剣の舞」は新陰流の始祖「上泉伊勢守」の高弟である疋田景忠と、家族を敵兵に惨殺された庶民の娘の交流を軸に、時代の要請により変質せざるを得ない武術家の命運を描いたものです。どちらの作品も、それまでの価値観が崩壊し戸惑う人々の苦しみが描かれていますが、岩明氏のドライな絵柄と飄々とした登場人物達は、決して声高にそれらの悲劇を叫び続けることはありません。
史実に対してかなり自由に想像力を使っているようですが、歴史ミステリーコミックの佳作だと思います。