酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

あなたを変える「稼ぎ力」養成講座 決算書読みこなし編

渋井真帆(著)
店頭で平積みになっていたのをパラパラとめくって、少し面白そうだったので購入しました。過去にも何冊かこの手の本を読んできましたが、読んでいて「面白い」という感想を抱いたのは初めてでした。この本がユニークなのは財務諸表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)の「意味」とそこに隠された「物語」の読み取り方を手ほどきしてくれることです。
詳細な項目の説明を延々と続ける代わりに、重要な項目だけに絞りそれらが登場する財務諸表の意味を「動的な視点」から解説していきます。著者が動的な視点にこだわる理由は、決算書はある会社の一期だけのものを睨んでいてもあまり意味がなく、その変化こそが真に着目すべき点であるという主張から来ています。
本の後半では前半で説明した決算書の知識を使って、日産、トヨタ、ホンダ、三菱の決算書を読み比べたり、日産リバイバルプランが進行中の決算書を時間軸に沿って眺めて、実際に何が達成されたかを見たりといった極めて実践的な事例が示されます。この後半などはまさにエンターティメントそのもので、つまらない企業小説など足元にも及びません。しかも読者はこうした楽しみを新聞の一見無味乾燥な経済記事から自力で抽出するためのヒントを得ることができるので、一粒で二度美味しいというところですね。