酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

うまい犯罪、しゃれた殺人 〈クラシック・セレクション〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫) ハヤカワ・ミステリ 820

ヘンリイ・スレッサー (著), アルフレッド・ヒッチコック (編纂), 高橋 泰邦 他(翻訳)
これまた「ヒッチコック劇場」の原作として使われたものを、ヒッチコック氏が編纂した作品集です。さすが厳選されているだけあって、短いながらいずれも面白くあっと驚くどんでん返しが読者を待っています。前書きにヒッチコック氏が書いている、番組やその後ろ盾となったこの短編集の「哲学」を以下に引用しておきましょう。


1. 殺人はきれいなものじゃない
2. 暴力は正当な理由がなければ退屈である
3. 本当の気難し屋はひとりもいない
4. 犯罪は引き合わないが、楽しいものであることは確かだ
5. 遊びが大切だ
紙面の都合で単なる悪人として描かれる人物も出てきますが、多くの犯罪者達はどこかしら抜けていて、思わず読者の失笑を招くような人々です。まあ犯罪が決して割に合わないというメッセージも底流に流れているところも人気を博した理由でしょうか。物語の展開なども、アイデアの宝庫という感じですね。ここに出てくるアイデアを下敷きにしたような物語をよそで読んだような気になる方もきっといることでしょう。