関川 夏央(作), 谷口 ジロー(画)(ASIN:4575932817)
石川啄木のイメージが世間でどうなのかは良く知りませんが、多くの人にとっては「ああムカシの歌人ね」といった程度でしょう。
というのはあまりにも有名ですが、正直中高校生の頃は何が面白いのかよくわかりませんでした(笑)。
東海の小島の磯の白砂にわれ泣き濡れて蟹と戯る
しかしながら、年齢を重ねてきて、生活者として苦しんだ(それは多分に石川啄木自身の性格にも起因しているのですが)啄木の実像を知るにしたがい、奇妙な連帯感(?)を感じるようにもなりました。
ここで紹介した本は、生活者としての啄木のダメさ加減を、優しくそして哀しいユーモアで包み込んで描き出した本です。日本が急速に近代化していく中で、旧来の価値観と新しい自由な機運の間に引き裂かれる個人の辛さもよく描かれていると思います。まあこれは「『坊っちゃん』の時代」シリーズ(全5巻)を一貫して流れるテーマでもあるのですが。