酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

安心のファシズム―支配されたがる人びと 岩波新書 新赤版 897

斎藤 貴男 (ASIN:4004308976)
気が滅入るような題材ですが、忘れてはいけないこと、大切なことを喚起してくれます。
2004年の4月から5月にかけて、イラクで発生した日本人人質事件は、その後日本で巻き起こった人質ならびにその家族に対する異常なバッシングは、日本人のメンタリティがどのように変わろうとしているのかを考えさせるのに興味深い材料でした。それから程なくして起きた日本人ジャーナリスト2名への襲撃殺害事件では、バッシングどころかその功績を称える論調がほとんどでした。この違いは何から来たのでしょう。多分最初の3人の場合も、彼らが一撃で殺されてしまい、自衛隊撤退云々の取引材料にされなければ、殺された2名と同様に「英雄扱い」され、「だからテロへの戦いに日本も積極的に協力しなければならない」という論調の補強材料にされたのではないでしょうか。
「自己責任」「心のノート」「家族主義の同一線上に位置づけられた国家主義」…最近気になるキーワードが多すぎますね。
2004年2月25日、超党派国会議員連盟「教育基本法改正促進委員会」の設立総会が東京で開かれました(自民党から43人、民主党から10人の計53人)。この総会の場では、とある国会議員による「興味深い」挨拶もなされています「お国のために命を投げ出しても構わない日本人を生み出す。お国のために命をささげた人があって、いまここに祖国があるということを子供たちに教える。これにつきる」「お国のために命を投げ出すことをいとわない機構、つまり国民の軍隊が明確に意識されなければならない。この中で国民教育が復活していく」。この発言は出席した国会議員の間でさほど違和感なく受け止められ、新聞報道もほとんどなされていないようです。
最近お気に入りで、よく読んでいたサイトの一つが閉鎖されました。人気が出るにしたがってバッシングが始まりついに閉鎖に至ったようです。特に政治的な主張もない、ほのぼの系のサイトにもかかわらず、一度バッシングが始まると転がる石のようにエスカレートが始まる傾向にも恐ろしいものを感じます。
何が起きようとしているのかを、より注意深く見つめていく必要がありそうです。