酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

ビゴー日本素描集 岩波文庫 青 556-1

ビゴー, 清水 勲 (編) (ASIN:400335561X)
明治15年に21歳で来日したフランス人画家ジョルジュ・フェルディナン・ビゴーによる明治期の日本人を描いた素描集です(注釈と編纂は清水勲氏)。最初浮世絵に憧れて来日したビゴーですが、すぐに文明開化に沸き、古さと西洋的な新しさが混沌と入り交じる状況に段々と興味を惹かれていったようです。本書に描かれている素朴な日本人の姿は、現代に生きる私達にも郷愁を呼び起こさせずにはいられません。
もちろん懐古趣味だけで歴史を振り返るのは、安易な感傷に過ぎませんが、それでもここに描き出された日本人達のひたむきさは今でも興味深い光景です。
明治期の生活に関する豆知識もそこここに記述されていて楽しめます。たとえば東海道線は当初(明治22年頃)新橋神戸間を約20時間かけて走っていたとか、新橋神戸間の二等者の運賃が7円53銭だった(巡査の初任給が8円)といった事柄です。