酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

無限論の教室 講談社現代新書 (1420)

野矢茂樹 (ASIN:4061494201)
無限論のお話を再び。「無限」という概念は通常の私達の感覚を超えた存在のようですが、それに対して様々なアプローチがなされて来ました。この本では無限として観察される対象が目の前にあるとして議論を行う「実無限派」と、無限に要素を生成させることのできる規則のみがあるとする「可能無限」の両方の立場の違いを解説したり、カントール対角線論法にイチャモンをつけてみたり、そこからラッセルのパラドクス、ゲーデル不完全性定理へと発展したりと、新書の割には盛りだくさんの内容が書かれています。
とはいえ内容は哲学教師が二人の学生に対して、講義をしていくという気軽な形式で書かれています。一種の良質なミステリーを読んでいるような気にもさせられると言ったら、他のマジメな読者には怒られそうですが、それくらいの面白さはあると思いました。
内容を正確にフォローしていくのは、少し骨が折れるところがあるかもしれませんが、それでもこの手の議論としては素晴らしく分かりやすいものの一つだと思います。
高校生や大学生の人たちにも是非読んで欲しい内容だと思いました。