酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

重力ピエロ

伊坂幸太郎 (ASIN:4104596019)重力ピエロ
「チルドレン(ASIN:4062124424)」「陽気なギャングが地球を回す(ASIN:4396207557)」に続いて読んだ伊坂幸太郎氏の作品ですが、相変わらずのテンポの良さに苦もなく読み終わることができました。他の本と同様にミステリーというには浅いし、社会派というには軽い仕上がりなのですが、小説としての面白さは損なわれていません。私が心惹かれてやまないのは、登場人物達の「潔さ」です。
この本の主人公は遺伝子診断企業に勤める「私」と、複雑な生い立ちを背負った弟の「春」、そしていまや末期癌で入院中の「父親」の三人です。それぞれの思いが交錯しながらも、家族としての信頼関係を保ちながらドラマは展開します。かなりクサイととられかねない台詞も登場しますし、それがとても受け入れられない読者もいることと思いますが、この殺伐とした現代にいっそあり得ないほどの「ええ格好しい」を提示するところに、私は作者の思いの深さを見るように思います。と、色々書きましたが要するに面白くて気に入っているのです。