酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

漢字と日本人

高島俊男 (ASIN:4166601989)
漢字は中国からの輸入品です。もともと輸入品の文字をつかって日本語を表現しようとさまざまな努力を重ねた結果、世にも複雑な表記体系が生まれました。たとえば

「十一月の三日は祝日で、ちょうど日曜日です」
という文の中には4つの異なる「日」(カ、ジツ、ニチ、ビ)が出てきます。
たまたまお隣が中国だったので日本語には漢字が輸入されやがて「ひらがな、カタカナ」も生み出されたわけですが、極端な話お隣がアルファベットの国なら日本語の表記がそうなってもなんの不思議もなかった筈です。この本は漢字と日本語の関係を歴史を縦横に遡りながら解説してくれる興味深い本です。
ただ、日本語と漢語の関係については(著者が専門でもあるため)非常に深い議論が示されているのですが、日本語(和語)を支えている韓国語との関係に触れられていないのが、かなり物足りない点でした。漢文の話 (ちくま文庫)
丸谷才一先生と同様に、時々激昂モードに切り替わるのは、それだけ日本語の将来を憂えていらっしゃる証拠というものでしょう(笑)。そのへんのベランメェ文を読むのも楽しみの一つといえます。
ところで、本書では頼山陽の「日本外史」が和製漢文であって、本場の人には意味のないものであると切り捨てられているのですが、斯界の碩学吉川幸次郎」氏の「漢文の話」によれば、「日本外史」は本場で激賞されているほど格調高い文章であるという記述があります。さて素人の私には全くコトの真偽がわからないのですがどちらが正しいものやら(?_?)。