酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

黒冷水

羽田圭介 (ASIN:4309015891)
17歳の高校生が書き、第40回文藝賞受賞ということで話題になった本だということです。日常に生まれる憎悪を少しずつ増幅させていく様はなかなか巧みで読ませるものがありました。すなわち「読み物」としてはなかなか良く出来ています。「黒冷水」というネーミングとその描写も結構良いと思いました。
途中から少々シュールな展開になってくるのですが、それには理由があることも最後に明かされます。しかし、まさにその「理由」により、全てのリアリティが弱まってしまったような気がします。とってつけたようなエンディングには脱力気味でした。
心理的な動きを執拗に掘り起こしていく力量は感じられました。次回作以降どのような方向に伸びていくのでしょうか。