酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

孤独か、それに等しいもの

大崎善生ASIN:4048735306
短編小説集です。この著者の孤独の捉え方は私の感じ方とは違うと思うのですが、気が付くと一人称で語られる主人公の視線に沿っている自分に気が付きました。5つの短編は一歩間違えれば陳腐と言っても良いほど同じ構造を持っています。近しいものの死、近しい者の死から自分が排除された疎外感、逃れられない呪縛、そして解放への予感。
読後感はどれも悪くありません。著者が繰り返し伝えたいと思っていたメッセージは何だったのでしょうか。それは言葉として表現するとどうということもないものなのですが、孤独を一身に引き受けながらも、やがて次に踏み出そうとする人への優しい肯定のような気がします。昨年読んだ矢作俊彦の「ららら科學の子」(ASIN:4163222006)に匹敵する、好きなタイプのフィクションでした。
なお、私は大崎氏のフィクションを読むのは初めてだったのですが、「将棋の子」(ASIN:4062737388)といったノンフィクションは以前から大好きでした。