酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

茶色の朝

フランク パヴロフ, ヴィンセント ギャロ(ASIN:4272600478

突然「茶色のペット以外は飼ってはいけない」という法律ができたことで日常生活にささやかな変化が訪れ、それが最後には取り返しのつかない事態にまで静かに推移していく様子を描いた反ファシズムの寓話。

慣らされることの恐ろしさをも描いているのですが、いかんせん簡潔すぎて説得力が少し足りないかもしれません。挿絵も私好みではありません(笑)。とはいえここで提起されている問題自身は大切なものだと思います。放っておくと取り返しのつかないような事態になりそうなことが、いまの私たちのまわりでも日々静かに進行しているような気がします。最初は「そんなくだらないことどうでもいいじゃない」と見過ごしていたことが、私たちの価値観(倫理観)を少しずつ突き崩して、やがて大きな悲劇の渦に巻き込まれる…。私たちはどこで「踏みとどまる」べきなのでしょうか。