酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

とびきり哀しいスコットランド史

とびきり哀しいスコットランド史 (ちくま文庫)

とびきり哀しいスコットランド史 (ちくま文庫)

スコットランド貴族の著者によるスコットランドの歴史。原始時代から主要な王様や事件を紹介しながら、スコットランドという国の成り立ちがなんとなくわかるような仕掛けになっています。といっても通史として読む事を想定しているというよりは、副読本として脇におきながら個別の登場人物のゴシップを読む感覚で参照するという使い方が相応しいと思います。文体もユーモアたっぷりで(まあこれは訳文の功績も大だと思いますが)、お好みのところを拾い読みしていくだけでも十分楽しめます。まあそれだけだと前後関係が少々混乱してしまいますけど。
なおカバーされているのは原始時代から、スコットランドが独立を放棄した1707の会議までです。
表題から、いわゆる二十世紀初頭の「ハイランドクリアランス」の話も紹介されているのかと思ったら、それより200年前で終わっていました(笑)。さすがヨーロッパの歴史は深いですね。
なお原題は

Scotland, Bloody Scotland

というもので。権謀策術とイングランドとの抗争に明け暮れ、ひとまとまりの国家の形としてなかなか機能できなかったスコットランドの悲哀を表しているともいえます。
なお、現在は 1998年スコットランド法の制定により、スコットランド議会が1999年に再開され、イングランドの法の制約下にありながら一定の独自の立法を行う事ができるようになっています。