全部で3部構成になっている本書は、夏目氏が様々な媒体に発表されたものを編集、出版したものです。なかなかの労作であることはわかるのですが、近年の夏目氏のマンガ評論は私にとっては少々読みにくいものになっています。きっと実作者でもある夏目氏の見ているもの、描き出したいものが、私にとって解り難いものであるせいなのかとも思います(私にとって読みやすいマンガ評論は、いしかわじゅん氏、関川夏央氏、呉智英氏などの手によるものです。今は近刊が予告されている、いしかわじゅん氏の評論集「漫画の時間2」を楽しみにしています)。
と書くと、この本に対しては後ろ向きな感想ばかりのようですが(失礼)、実は評論で構成された1部、3部に対して、「あしたのジョー」「巨人の星」の関係者(作者、編集者、アシスタントなど)に対するインタビューで構成された第2部はとても興味深いものでした。原作者の梶原一騎氏が既に死去しているためインタビューに登場しないことが残念です。