- 作者: 高田里惠子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2005/06/06
- メディア: 新書
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日本においては「教養」は、永らく旧制高校〜帝国大学という高等教育の文脈の中で(すなわち「エリート養成システム」の中で)語られて来ました。難解な哲学も、晦渋な文学もこうした文脈の中で「己が単なる受験秀才ではない」ことの証として身に着けるべきである、という一種の脅迫観念と結びついていたという記述は、80年前後位までに大学を(特に所謂「上位校」を)卒業した人間にはなんとなく理解できる気分かもしれません。
また庄司薫の一連の小説(「赤頭巾ちゃん気をつけて (中公文庫)」など)が所謂「小説」ではなく、旧来の「男子如何に生きるべきか」の流れを汲む「教養論」であるという指摘には思わず苦笑してしまいました。
かなり嫌味な薫りもする旧来の「教養」ではありますが、しかし80年代中ごろの所謂「ニューアカブーム」を最後にこうした「教養」の幻影も今は消え去り、現代の価値観の主軸はきわめて単純なマネーゲームの勝敗*1に収斂しつつあるような気もします。とはいえ事態が決して良くなったような気はしませんけどね。
*1:「勝ち組負け組」というイヤらしい表現が象徴的です