酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

トゥルー・ストーリーズ

トゥルー・ストーリーズ

トゥルー・ストーリーズ

「事実は小説より奇なり」。ポール・オースター氏による驚くべき「事実」の数々。実際にこの作家が経験したり、人から伝え聞いた話をエッセイの形でまとめたものです。読みようによっては「ネタじゃないの??」と言いたくなるほど、よく出来た話が集められているのですが、ここまで面白いと仮に嘘でもいいやという気になってしまいます。
人々の出会いと別れ、偶然の巡りあいや、皮肉な結末といった内容が息をもつかせぬ(というのは少し大げさではあるのですが)テンポで繰り出されて来ます。最初の方は短いエピソードが多いのですが、後半の方にはやや長めのものも収録されています。
911当日午後の様子や、それから一年経った地下鉄の情景を描写した最後の一編は詩的情緒に満たされています。
もちろん、この印象は巧みな翻訳者の柴田元幸氏の手柄にも多くを負っています。是非原書も読んでみたいと思ったのですが、この本自身は対応する原書がなく、日本向けのアンソロジーとして特に編集したものであるということがわかりました。それでも何か手に入れて読んでみようと思っています。