酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

今はもうない―SWITCH BACK 講談社文庫

森 博嗣 (ASIN:4062730979)
ということで、森氏もいよいよ筆のノリが良くなってきたようで(笑)。今回はまた別の実験を見せてくれました。ここまでの犀川&西之園シリーズは皆第三者の視点(神様の視点とも言う)で書かれていましたが、この巻では、新たな登場人物の一人称の視点で、物語の大部分が展開します(合間合間におなじみのコンビが登場する短い章が挟まれてはいます)。最初に「実験」とは呼びましたが、文章の味わいとしても、ここで更に一段違う味わいを見出すことができましたし、また「全てがFになる」から読んできて、ここまでで一番ユーモラスな作品という印象も受けました。
ところで、多くの読者の方々が既に指摘していますが、この巻だけをいきなり読むと面白みが半減してしまいます。御用とお急ぎでないかたは、是非これ以前の4冊程度を読んで置いた方が良いかもしれません。

いや、しかし…思えば遠くに来たものだ(笑)。このシリーズあと二冊です。