酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

つっこみ力

つっこみ力 (ちくま新書 645)

つっこみ力 (ちくま新書 645)

お正月早々「真面目」な本の紹介が続いたので、今回は少々毛色の変わった本を。

世の中に溢れる「正しいけれど誰も聞いていない」真面目な議論より、「面白くて愛のある批評」を目指すべきであることを説いた本です。まあ人間が理屈で説得されたり動いたりはしないということは id:ardbeg1958:20080101 で紹介した本にも触れられていた、普遍的心理(真理)のようです。

合言葉は

愛と勇気とお笑いと。

たとえ脊髄反射的であったとしても、十分な準備をしてから論理的な批判を行うよりも、なによりも即時性と、そして笑いが批評に必要な場合があります。

批判の時期を逃すことの方が問題になる場合には、まずは何らかの声を挙げること、しかしその場合相手を追い込んだり第三者にとって分かりにく議論を展開する代わりに、もっと気楽に(相手を追い込んで人格的人格の戦いにしない)かつ笑いをとれる(第三者の興味をひき印象にのこる)ようにしよう。というのが本書の主旨です。そしてこのときに取るべき態度を、ひとことで表したものが

ツッコミ

なのでしょう。

個人的な経験をお話しすると、トラベリング・コンサルタント*1の私は、某関西企業の方と長年お付き合いがあるのですが、その中にきわめて面白いツッコミをする人がいます。付き合い始めは正直に言ってそのツッコミに戸惑いました。だって全然「お行儀よくない」(平均的日本人の価値観からすれば)のですから(笑)。
しかしそうしたツッコミは、ともすれば反論があっても心にしまい込みがちな態度よりも、気軽に問題点を浮かび上がらせ、また笑いを介することにより「あなた vs わたし」ではなく「問題 vs 私たち」の構図に持ち込みやすい優れた手法なのです。

ところが、最近は「東京的価値観」といいますか、「ぐろおばるすたんだあど」といいますか、オブラートに包んだ正論重視のような態度が、関西圏でも見られるようになっているような気がします。。。少なくとも外部に対する発信から「ツッコミ」の要素が(お笑い番組を除いて)消えつつあるような気がするのです。これはとても残念なことですね。

ところで、大変効果的な関西式「ツッコミ」なのですが、これをいわゆる標準語でやられると、なかなかキツいものがあります。
よく大阪のひとなどが、「東京の言葉はキツい」という言い方をしますが、確かに「東京の言葉で、大阪式ツッコミ」をすると、慣れていなければ血圧が上がりそうなインパクトがあります。実際私は別の場所で、そういった場面に遭遇したときに、あとからその人のバックグラウンドを知って「なあんだ、あれは関西式ツッコミだったんだ」と思ったことがあります。

なので、ツッコミは関西弁でよろしく(笑)。

*1:「旅をする」コンサルタント、という意味で「旅の」コンサルタントではない