酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

詩とことば

読書家と呼ばれるひとでも、「詩」となると臆してしまう。それほどまでに、特に現代における詩というものは「特別な書き手」と「特別な読み手」によって構成されている閉じた世界のように思われているようです。荒川洋治氏はこの現状に切り込み、詩と散文の対比から始めつつ、刺激的な考察へと踏み込んで行きます。
散文の世界の言葉は、秩序だてられて、整然と世界を叙述する目的に使われるのですが、対して詩の世界の言葉はその秩序の鎧の下が垣間見えるような力をふるいます。そのような吐息のような言葉、関係性が開かれたままの言葉であればこそ、飾られない感動を伝え、読み手を不安にし、新たな発想を引きだすことが可能になるのかもしれません。
本書は言葉のもつプリミティブな力を考えさせてくれる刺激的な本です。