酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

デザインのデザイン

デザインのデザイン

デザインのデザイン

「UNE AUSSI LONGUE ABSENCE = かくも長き不在」をお詫びいたします。やっと息がつけるようになりました。生存確認のメールをいただいた皆様有難うございます。

さて、本書はそのタイトルのように、デザインのデザインすなわちメタ・デザイン*1に関する秀逸な考察です。
デザインとアートの違いは何か。社会的な問題にアプローチするのがデザインであり、個人的な問題にアプローチするのがアートであるという筆者の定義は、簡潔にして本質を衝いています。決して日本語でいうところの「デザイナー」向けに特化した本ではありません。創造という行為に少しでも携わり、他者の「問題解決」に尽力している人には、様々な考察のきっかけを与えてくれる本でしょう。また第6章の紹介されている、日本国内で営まれる創造への苦闘の事例は勇気付けられること大です。
またこの本は人間の「理性」に対する「信頼」を表明し、その態度を守り続けることの価値を宣言した本でもあります。これに関してはもちろんナイーヴに過ぎるという批判もあるでしょうが、発想の原点が「邪悪ならざるもの」であることはとても大切です。戦術としての狡猾さはその上に構築されれば良いことでしょう。
この本は「(私が読んだ)今年の10冊」の一角を占めるに相応しいものです。本は2002年の出版ですけど。

*1:なんのこっちゃという方もいらしゃると思いますが…