脳と心をあやつる物質―微量物質のはたらきをさぐる

脳と心をあやつる物質―微量物質のはたらきをさぐる (ブルーバックス)

さまざまな物質が、脳に（ひいては心の現われに）どのような影響を与えるかを、概説してくれるとても興味深い本です。ほんのちょっとした物質のバランスの崩れが QOL *1に甚大な影響を与える様はまるで一級のミステリを読むような感覚さえおぼえますね。それにしてもどんなに小さな代謝機構の話を読んでも、その巧みな構造には感心せざるを得ません。
もし私が今学生だったら、脳神経生理学かそれにまつわる薬理学の研究か、さらに一歩進んで向精神薬のドラッグデザインに挑戦したくなっていたかもしれません。もちろんこれは両刃の剣なのですが…。
しかし様々な物質を取り上げその作用機序を解説する筆者の文体はこの分野が好きでたまらないといった様子で満ち溢れています。そういう意味では自分の進む道を考えたい若い人への格好の刺激にもなる本ではないでしょうか。

*1:Quality of Life