酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

愚問の骨頂

愚問の骨頂 (新潮新書)

愚問の骨頂 (新潮新書)

正しい問題解決は「正しい問いかけ」から。正しい問いかけはそれ自身解答への萌芽を含んでいるものです。誤った問いかけをいくら繰り返しても徒労に終わるだけです。語り口は平易ながら、問題を腑分けする視点の重要性を説いた大変面白い本だと思います。
問題解決に煮詰まったときに、インスピレーションを得るために読むという方法もあるでしょうか。
ところで色々な愚かな振舞についての事例もあり参考になります。有名な話ではありますが、特に森鴎外がその頑迷さにより多くの将兵の命を奪ったも同然というくだりには改めて背筋が寒くなりました。当時ビタミンB1不足による脚気が大問題になっていたのですが、栄養学が未発達だったために、原因がはっきりしていませんでした。このとき海軍では経験的に玄米食や洋食が脚気の予防になることを知り、脚気の患者を出さないことに成功しました。にもかかわらず陸軍軍医の元締めだった森鴎外森林太郎というべきでしょうかね)は、科学的な因果関係が証明されていないとして、海軍のやり方を陸軍には導入しませんでした。その結果日清日露戦争を通し陸軍には脚気による何万人もの犠牲者が出たのです。日露戦争における最大の敵はロシアではなく身内の医者だったという顛末。