
- 作者: 安斎育郎
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2002/08
- メディア: 文庫
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不思議なものへの憧れが、人生や人間生活の潤滑油として機能したり、敬虔な気持ちが人間の徳性を高めてくれる間は良いのですが、それが人間の(しかも他人を巻き込んだ)運命を徒に左右したり、差別や虐待を助長したり、本人を精神的経済的に追い詰めるようになっては冗談で済ますことはできなくなります。
本書の著者の安斎育郎氏は、決して科学万能主義者ではなく、科学には限界があることを認めた上で「必要な場所で、合理的考察を積み重ねていくことの大切さ」を訴えます。世の中に瀰漫する「思いがかなわないことによる、諦めをともなった無力感」が人間の心を弱くしていき、結果として不合理な事態に巻き込まれる悲劇をなんとかしたいという思いが行間からひしひしと伝わって来ます。
私にとってもこうした事態は決して他人事ではありません。