酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

なぜ美人ばかりが得をするのか

なぜ美人ばかりが得をするのか

なぜ美人ばかりが得をするのか

原題は "Survival of the prettiest: The science of beauty" (最も美しいものが生き残る:美の科学)というもので、特に女性の美に関してだけではなく、男性の美についても多くのページを割いています。邦題はまあマーケティング上の考慮から付けられたものですね。
内容的には美しい肉体がかつては(特に生活環境が厳しい時代には)丈夫な子孫を残すことのできるサインであったことから、人間の本能の中に美しいものに惹かれる性向があることを、様々な心理学的実験から実証します。まさに原題にあるように、私たちはそうして淘汰された生き物の末裔なのです。
また、この本はそうした生物進化の観点からの論点だけではなく、赤ん坊のかわいらしさと母親の行動の関連に関する実験、ファッションの心理的効果、声、匂い、フェロモンが人間の心理に与える効果、背の高さと社会的地位の関連などなど、多様な話題がたくさん詰め込まれています。美に関する一通りの議論の含まれた学術入門書と言えるでしょう。
とはいえ中で述べられている結論に私たちの直感を大きく裏切るものは含まれていないので、その意味では少々退屈な部分もあります(一気に読むのは少し辛いものがありました、一日一章ずつ読むくらいがちょうど良さそうです)。まあもともと様々な学術的成果をまとめて概観することが目標だったので、「面白さ」は二の次だったのだとおもいますが。