酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

本よみの虫干し―日本の近代文学再読 (岩波新書)

関川 夏央 (著)
どうやら世間では間違えられ易いようなのですが、「本の虫干し」ではなく「本読みの虫干し」が正式なタイトルです。本書は朝日新聞に連載された同名のコラムと、岩波書店の「図書」に掲載されたコラムに加筆訂正したものからなっています。
主旨としては、ここ100年ほどの日本文学の軌跡を、文学的価値からではなく、その時代背景や作者の視点などから描き出そうとしています(何点か翻訳物も混ざっていますが)。もともとが短いコラムなので、どこから読み始めてもよく、また一編だけ読み齧るといった楽しみ方も可能です。
ところで「…は…して、遂に…である」といったような言い回しが良く出てくるのですが、なんとなく山本夏彦氏や司馬遼太郎氏の文体を髣髴させます。関川夏央氏の昔からのファンとしては少々食い足りない(というより喉越しが良すぎる)きらいはあるものの、優れた日本近代文学ならびにその歴史入門といった感じです。