酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

語り女たち

北村 薫
久しぶりの北村薫氏です。この本はミステリではなく、主人公に対して様々な女性が不思議な話を語るという趣向です。全部で17編収録されています。ささやかなしかし飛び切りの「謎」たち。短編集「水に眠る (文春文庫)」が好きな人ならば、きっとこの本も好きになると思います。どの短編も溜息をつきたくなるような静かな色に満たされています。ほのぼのしたものもあり、闇を覗くような心持のものもあり、そしてそっと気持ちが震えるものも。どれがお気に入りかと聞かれると大変迷うところですが、「違う話」「笑顔」「夏の日々」「Ambarvalia」「梅の木」といったところを挙げておきましょう。この作品集で直木賞をとりそこなったそうです、理由は「インパクト不足」。でもこの本にインパクトを求める方が野暮というものです。
一気に読んでしまいましたが、実は勿体無い。時間をかけて読むもよし、繰り返し読むもよしといった作品です。秋の夜長のお供に。