酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

数奇にして模型―NUMERICAL MODELS 講談社文庫

森 博嗣 (ASIN:4062731940)
S&Mシリーズ(と世間では呼ぶそうな)の通算第9巻。この巻では「複製、模型、そして名前」を巡る動機の周りに、視覚的にも非常に美しい舞台装置が用意されています。
森氏の文章は一段と「流動性」を高めていて、世界の「彩度」が高まり、今までの登場人物達もまるで一皮剥けたかのように「活性化」されています(笑)。丁度今までフィルム収録だったドラマが、ビデオ収録に変わったような感覚を受けました。別の言葉で言えばよりポップになったということかもしれません。
他に書かれている書評などを読むと「オタクっぽい薀蓄の披露が、いままでのペダンティックな雰囲気を壊している」と言って、この巻を嫌う方もいるようですが、物語に論理性は求めても衒学性は求めない私には、「薀蓄の披露」は単純に楽しめました。
また多くのバイプレーヤー達の活躍も顕著です。犀川の友人喜多や大御坊、大学院生の金子など。また派手な立ち回りも用意されているというサービス満点の巻ですね。
さて、いよいよあと一冊です。