酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

アホでマヌケな米国(アメリカ)ハイテク企業―エクセレント・カンパニーを崩壊に導いた、トホホなマーケティング20年史

メリル・R. チャップマン, 星 睦 (ASIN:4844319418)
私のように70年代の終わり頃からマイコン〜パソコンを使っていた世代(つまり雑誌のアスキーやI/Oの創刊を目撃した世代ということですが)にとっては、とても興味深く読むことのできる本でした。90年代半ばから、すっかり「悪の帝国」として(冗談ですよ)、評判を落としたかのように見えるマイクロソフトも、かつては徒手空拳でIBMを代表とするメインフレームメーカーに立ち向かうベンチャー企業でした(徒手空拳というのはちょっと言い過ぎかもしれませんが、存亡の危機には何度も晒されていた筈です)。今はすっかり貫禄のついてしまった感のあるマイクロソフトも、80年代はワードスターや dBaseII、アップルなどの後塵を拝していました。
しかし、かつてのライバル達は今は見る影もありません(マッキントッシュの市場占有率は4%程度です)。この本の著者の主張は、マイクロソフトが特に優れていたからではなく「致命的な誤りを犯さなかった故に生き残った」というものです。
著者はマーケティング畑の人なので、技術的な面白みはありませんが、ハイテク企業の中で何が発想され、それがどのようにかつての「エクセレントカンパニー」の首を絞めていったかに興味のある方は楽しめます。