酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

すべてがFになる―The perfect insider 講談社文庫

森 博嗣 (ASIN:4062639246)
というわけで、森博嗣氏の作品に手を出してみました。「すべてがFになる」というタイトルの意味は早い時期に予想ができましたが(まあ一種業界用語のようなものです)、トリックを構成する核心アイデアはわかりませんでした。
しかし一度トリックを思いつけば、そこからまわりの状況を「逆演算」していくことは、作者にとって注意深くパズルを設計するようなものだったと思います。なぁんて印象を受けるところが、この作者が「理科系作家」と呼ばれる所以なのでしょうけれど。500ページを超える本ですが非常に読み易いため、短時間で読み終わることができました。
ただ、ミステリとしては「謎」が残ります。特に「犯人」に課せられていた状況がいまひとつ納得できません(それを書くとネタバレになるのでかけませんが)。そのため犯人の「動機」も結局不明瞭なものになってしまいます。ただ安易な種明かしはしない、見えているものが答というわけではない、といった作者のメッセージを感じることはできます。
まあ、この「シリーズ」は全10巻あるそうですし、この本の解説を書いている瀬名秀明によれば「全てを読んだときその仕掛けに、読者は驚く」なんて気を持たせるようなことが書いてありますから、先を読むと更に何かがわかるのかもしれません。う〜む進むべきか否か。