酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

鬼平犯科帳 (1) 文春文庫

池波 正太郎 (ASIN:4167142538)
火付盗賊改方の長官、長谷川平蔵は、”鬼の平蔵(鬼平)”と呼ばれ、盗賊たちには恐れられる存在だった・・・。いままで、この手の「捕物帳」にはあまり縁がなかったのですが、今回試しに第一巻を読んでみました。さすが最初の発表が昭和42年ということで、この第一巻は古くさい感じもあるのですが、内容としてはとても面白いものでした。特に鬼平が完全無欠のヒーロー然とはしておらず、昔は若気の至りの愚かなことも重ねたものの、今は役目を精一杯に果たすべく精進を重ねる人物として描かれているところが好感が持てました。読み切り短編が続きながら全体としては大きな長編もなしているというスタイルは、作者にとっても負担の大きなものだろうと思います。この中に登場する人物たちも、単純な善悪の割り切りの中に生きていない者も多く、さまざまな思惑がすれ違ううちに誰にもみとられることなく、落命するものもあるところが物語に彩りを与えています。
しかし、全部で24巻もあるというのが少々ネックですねぇ(笑)。とりあえず第4巻までは入手しました。